設置前に必ず確認!太陽光発電の最適な条件や発電量の計算式

太陽光パネルの設置面積や角度・方角・地域、変換効率、パワーコンディショナーの性能など、太陽光発電の発電量を左右するポイントを解説。天候状態や熱損失など、発電量の低下原因となる損失や計算式、日本で日照時間が多い都道府県も紹介。

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設置前に必ず確認!太陽光発電の最適な条件や発電量の計算式

目次

発電量を左右するポイント

太陽光発電の発電量を左右するポイントには、太陽光パネルの「設置面積」や「性能(変換効率)」、「設置角度・方角」のほか、パワーコンディショナーの性能があります。ここでは、発電量を左右するポイントについて、ひとつずつ見ていきましょう。

太陽光パネルの設置面積

太陽光発電の発電量は、単純に太陽光パネルの設置面積に左右されます。設置面積というのは、「太陽光パネルを設置可能な屋根の面積」という意味です。

太陽光発電の設置面積が大きければ、太陽光パネルをたくさん設置できますので、それだけ発電量も増やすことができます。また、太陽光パネルの設置面積は、屋根の形状によっても異なります。

太陽光発電の設置に必要なパネル枚数について詳しくはコチラ

日本の住宅で採用されている主な屋根の形状は以下の通りです。

切妻(きりづま)

切妻形の屋根は、日本でもっとも普及している屋根の形状で、ちょうど髪型の中分けのように真ん中で屋根が折れ、左右両面に長方形が広がっている2面タイプです。太陽光パネルを設置できる面積が広いため、太陽光発電と相性が良い屋根です。

ただし、屋根が向いている方角が重要で、屋根の方角が東西2面であれば両面に太陽光パネルを設置可能ですが、南北2面の場合は南側の屋根にしか設置できません。(北側は陽の光が当たらず発電できないため)

寄棟(よせむね)

寄棟形の屋根は、日本の古い住宅ではもっともポピュラーな屋根でしたが、近年は減少傾向にあります。形の特徴は左右に広い台形の屋根が広がり、上下には小さな三角形の屋根がある4面タイプです。

寄棟形の屋根は北側以外の3面に太陽光パネルを設置できますが、太陽光パネルは長方形のため、設置できる面積が限られてしまいます。ただし、最近では寄棟タイプの屋根でも隅々まで無駄なく設置できるように、長方形以外の形状をした太陽電池モジュールも三菱電機などから販売されています。

陸屋根(ろくやね)

陸屋根は真っ平らの屋根で、主に北海道の住宅で多く見かけます。全面に太陽光パネルを設置できますが、角度をつけるために架台(太陽光パネルを支える台)を太陽光パネルの下に設置し、角度をつけてあげる必要があります。この架台が比較的高額なため、太陽光発電システムを設置するための初期費用が上がってしまいますが、発電に最適な角度を設定できるため、売電収入は安定しやすいです。

片流れ屋根(かたながれやね)

片流れ屋根は、陸屋根のような1面タイプで角度がついた屋根のことを差します。日本では近年増加傾向にある片流れ屋根ですが、斜面が北側に向いている場合、架台などを設置しない限り太陽光発電の設置は難しいでしょう。太陽光が当たりやすい南側に斜面がある場合は、太陽光発電システムの設置には最適です。

このように、太陽光パネルの設置面積は、屋根の形状によって大きく異なります。まずはご自宅の屋根がどのような形状なのかを確かめてみましょう。

太陽光パネルの性能/発電効率(変換効率)

太陽光発電システムの発電量で重要なのは、太陽光パネルの性能です。ここで言う性能とは発電効率(変換効率)のことを指し、発電効率が高いほどより多くの電気を発電することが可能となります。

太陽電池モジュールの発電効率(変換効率)は、メーカーや素材などによって異なりますが、2019年現在のモジュール変換効率1位は東芝の22.1%となっています。

ただし、変換効率が高いからといって、必ずしも設置に向いているわけではありません。東芝などの日本メーカーの太陽光パネルは高額なため、実際に人気が高いのは導入コストを抑えることができる「カナディアン・ソーラー」や「Qセルズ」など海外メーカーの太陽光パネルです。

各メーカーごとの太陽光パネルの発電効率については、以下のリンク先で詳しく解説していますので参考にしてください。

太陽光パネルの発電効率比較はコチラ

必ず「モジュール変換効率」を確認!

変換効率の中にも、モジュール変換効率とセル変換効率が存在します。モジュール変換効率とセル変換効率には、以下のような違いがあります。

モジュール変換効率
モジュール変換効率は、セルが集まってできたモジュール(パネル)1枚ごとの変換効率のことです。一般的に変換効率という場合、こちらのモジュール変換効率のことを指している場合がほとんどです。

セル変換効率
セル変換効率は、モジュール(パネル)を形成しているセル1枚ごとの変換効率です。通常の場合、モジュールは約70枚のセルで構成されています。

このセル変換効率は、モジュール変換効率に比べると1割ほど変換効率が高くなる傾向があります。(理由はモジュールにしたときセルとセルの間に隙間ができたり、セル表面にガラスが無いためなど)

そのため、メーカーによってはカタログなどでセル変換効率をあえて書き、変換効率を高く見せようとしている場合もありますので、注意が必要です。変換効率は、必ず「モジュール変換効率」を確認するようにしましょう。

太陽光パネルの設置傾斜角度・方角

太陽光発電システムは、太陽光パネルを設置する角度や方角によっても発電量が大きく変わります。ここでは、太陽光パネルを設置する最適な角度と方角についてご紹介していきます。

太陽光パネルに最適な傾斜角度は地域の緯度にあわせること

一般的に、太陽光パネルを設置する最適な傾斜角度は30度と言われていますが、実は各地域の緯度に合わせることが最も最適です。日本で最も緯度が高い北海道の最適傾斜角度は約35度程度、日本で最も緯度が低い沖縄の最適傾斜角度は約18度となっています。

  • 東京(八王子)最適傾斜角度:約33度
  • 北海道(札幌)最適傾斜角度:約35度程
  • 沖縄(那覇)最適傾斜角度:約18度

また、太陽光パネルの傾斜角度は季節でも異なりますが、基本的に太陽光パネルは一度設置してしまうと傾斜角度の調節は行なえませんので、1年間の平均値の値を最適傾斜角度とし、その傾斜角度で設置するのが一般的です。

なお、お住いの地域の最適傾斜角度の算出方法は、NEDO(産業技術総合開発機構)の日射量データベースにアクセスから確認することができます。

太陽光パネルに最適な方角は南

太陽光発電システムがもっとも発電に適している方角は南側です。太陽は東からのぼって西に沈みますが、このとき南を通るため、1日を通して南側が最も太陽の光を浴びやすくなっています。

ただし、南西や南東も、真南とほぼ遜色ない程度に発電は行えます。あとは西側と東側、北西と北東、真北の順に発電量は減少していきます。

以下は、真南を発電量100%とした場合の、方角ごとの発電量の目安です。(各地域の最適角度に設置した場合)

  • 真南:100%
  • 南西:約96%
  • 南東:約96%
  • 西:約85%
  • 東:約85%
  • 北西:約73%
  • 北東:約73%
  • 真北:約66%

北西、北東、真北は、真南に比べて30%前後も発電量が落ちてしまいますので、太陽光発電の設置はあまりオススメできません。

太陽光発電を設置する地域(都道府県)

太陽光発電システムの発電量は、設置する地域によっても異なります。その理由は地域ごとの日照時間(太陽が地上を照らした時間)で、東北や日本海側は日照時間が短い傾向にあり、太平洋側は日照時間が長い傾向にあります。

地域ごとの発電量の違いについては、以下のリンク先で詳しく解説しています。

都道府県ごとの発電量の違いはコチラ

パワーコンディショナーの性能

パワーコンディショナーは、太陽光パネルで発電した”直流”の電気を、家庭用で使用できる”交流”の電気に変換する役目があります。このパワーコンディショナーによる電気の変換時に、数%のロス(損失)が発生するのですが、パワーコンディショナーの性能(変換効率)によって、ロスする割合が変化します。

ただし、ほとんどのメーカーのパワーコンディショナー変換効率は95~96%(三菱電機のみ98%)のため、太陽光パネルほどメーカーごとに差がなく、選ぶのに注意点やポイントはありません。

太陽光発電の発電量が低下する原因

太陽光発電の発電量が低下する原因は、太陽光発電システムのロス(損失)にあります。太陽光発電システムのロス(損失)には、「雨や雪などの天候状況」や「熱損失(高温による損失)」、「パワーコンディショナーでの変換損失」などがあります。

ここでは、太陽光発電システムでロス(損失)が発生してしまう原因について、詳しく解説していきます。

雨や雪などの天候状況

太陽光発電システムがもっとも発電できるのは、天気が晴れているときです。太陽光発電は曇りや雨のときも発電を行いますが、発電量は極端に下がってしまいます。

太陽光発電の天候別発電量の目安

  • 晴れ:100%
  • 曇り:10~40%程度
  • 雨・雪:5~20%程度

そのため、晴れの日が多い地域のほうが、より多く発電を行えるということになります。

曇りの日でも「Qセルズ」なら発電可能!

「Qセルズ」製の太陽光発電システムは、太陽の光が少ない低照度の土地でも発電できるように開発されているため、曇りや雨の日であっても十分な発電が可能です。

具体的には、晴れの日の5分の1の照度さえあれば、97~98%の発電が可能です。(晴れの日を100%と考えた場合)

熱損失(高温による損失)

カタログなどに載っている太陽光パネルの「公証最大出力」は、太陽光パネルの温度が25度のときを想定してつけられた値です。太陽光パネルの温度が25度よりも上がっていくと、1度につき-0.4~0.5%の出力低下が発生します。これが熱損失です。

沖縄などの晴れが多く気温が高い地域で、日照量が多いにも関わらず太陽光発電の発電量が全国1位ではないのは、この熱損失に原因があります。

ただし、最近では技術の進歩により、太陽光パネルの熱損失を減少させることに成功しているメーカーも存在します。たとえば、HIT太陽電池とCIS太陽電池を採用しているパナソニックとカナディアン・ソーラーの場合、以下の数値まで熱損失を軽減させることに成功しています。

  • パナソニック(HIT太陽電池):-0.258%
  • カナディアンソーラー(CIS太陽電池):-0.31%

HIT太陽電池とCIS太陽電池ってなに?

HIT太陽電池
HIT太陽電池は、性質のことなる材料同士を接合することにより、変換効率の向上を実現した太陽電池モジュールのことです。ヘテロ接合型太陽電池とも呼ばれます。

CIS太陽電池
CIS太陽電池は、主成分である銅(Copper)、インジウム(Indium)、セレン(Selenium)の頭文字をとった太陽電池モジュールで、シリコンを使わない低コストの太陽電池として注目されています。

影による損失

太陽光発電システムを設置する付近に木などがある場合、太陽光パネルに影がかかる部分は発電が行えなくなってしまうので注意が必要です。ご自宅に太陽光発電を設置する際は、周囲に日影の原因となる物がないか、事前に確認しておきましょう。

太陽光パネルの汚れによる損失

太陽光パネルは野外に設置する性質上、砂ぼこりや鳥の糞、黄砂などが付着してしまう可能性があります。軽い汚れは雨で勝手に洗い落ちてくれますが、使用年数が経過するうちに細かな汚れが蓄積し、太陽光パネルの一部にこびりついてしまうこともあります。汚れがこびりついた部分は、太陽の光をさえぎる影になってしまうため、発電が行えなくなってしまいます。

こうした太陽光パネルの汚れによる損失を防ぐには、パネルを定期的に洗浄するのが効果的です。太陽光は基本的にあまりメンテナンスが要らないと思われがちですが、パネル洗浄などのメンテナンスも必要だということを覚えておきましょう。

また、太陽光パネルの汚れは、パネルにコーティング剤をほどこすことによって防ぐことも可能です。

太陽光パネルのコーティング剤について詳しくはコチラ

パワーコンディショナーでの変換損失

パワーコンディショナーは、太陽光パネルで発電した”直流”の電気を、家庭用で使用できる”交流”の電気に変換する役目があります。このパワーコンディショナーによる電気の変換効率は、100%ではなく、ほとんどのメーカーが95~96%です。つまり、4~5%程度はロス(損失)が発生する計算になります。

ただし、三菱電機パワーコンディショナーは98%の変換効率を実現しているため、パワーコンディショナーの損失を最小限にしたいのであれば、三菱電機のパワーコンディショナーがオススメです。

屋根の大きさと出力で変わる太陽光パネルの必要枚数

太陽光発電システムを設置する場合、太陽光パネルが何枚必要かご存知でしょうか?ここでは、「太陽光発電システムに必要なパネル枚数」や、「狭い屋根におすすめの太陽光パネル」について解説していきます。

太陽光パネルの出力をチェック!

太陽光発電システムを設置するさいに必要な太陽光パネルの枚数は、設置する太陽光発電システムの容量と、太陽光パネルの公称最大出力によって決まります。

例えば、システム容量4kWhの太陽光発電を設置しようと考えた場合、

  • 公称最大出力200Wの太陽光パネル:20枚
  • 公称最大出力250Wの太陽光パネル:16枚

の枚数が必要になります。太陽光パネルの公称最大出力が大きければ、より少ない枚数で済ませることが可能です。

狭い屋根には出力が大きいパネルがおすすめ

設置しようと思っている屋根が狭く、設置場所が限られている場合は、できるだけ公称最大出力や変換効率が大きい太陽光パネルを選ぶようにしましょう。公称最大出力や変換効率が大きければ、同じ枚数でもより多くの発電量を確保することができます。

また、設置面積が狭くても、長方形以外の形状をした太陽光パネルをパズルのように組み合わせることで、設置枚数を増やせるパネルが三菱電機などから販売されています。設置面積が狭くて十分なシステム容量が確保できないときは、検討してみると良いでしょう。

太陽光パネルの発電効率比較

発電量を左右する要素の一つである太陽光パネルの発電効率(変換効率)は、メーカーによって異なります。ここでは、太陽光パネルの「発電効率ランキング」と「発電量ランキング」をご紹介していきます。

太陽光パネルの発電効率ランキングBEST3

  • 1位:東芝(SPR-X22-360):22.1%
  • 2位:シャープ(NQ-256AF):19.6%
  • 3位:パナソニック(VBHN252WJ01):19.6%

※2019年2月時点でのデータです。

太陽光パネルの発電効率(変換効率)の上位は、東芝を筆頭に日本の太陽光発電メーカーが独占しています。発電量をより多くするためには、発電効率(変換効率)が高い太陽光パネルを選ぶことが重要ですが、発電効率が高い太陽光パネルは初期費用も高価になります。

太陽光パネルを設置するのに十分なスペースが屋根に確保できる場合は、発電効率の高い太陽光パネルにこだわる必要はありません。

初期費用がお手頃なメーカーの発電効率

  • カナディアンソーラー(CS1V-265MS):19.59%
  • Qセルズ(Q.PEAK-G4.1 305):18.3%

※2019年2月時点でのデータです。

初期費用がお手頃なメーカーは、主に海外メーカーになります。カナディアン・ソーラーは初期導入コストが低いにも関わらず、太陽光パネルの発電効率は「19.59%」という、日本メーカーにも負けないほど高い数値なのがポイントです。

また、Qセルズも発電効率こそ「18.3%」とやや劣りますが、曇りの日でも晴れの日の5分の1の照度(太陽光の強さ)さえあれば、晴れの日の97~98%の発電を行うことができます。(通常は10~40%程度)
そのため、実際に太陽光発電システムを設置した後の発電量を示す「実発電量」でも定評があります。

太陽光発電システムを設置する場合は、発電効率だけではなく、初期の導入コストや実発電量にも注目しましょう。

太陽光発電は「実発電量」が重要

実発電量とは、太陽光発電メーカーが出している「公称最大出力」や「変換効率」の情報による推測ではなく、実際に太陽光発電システムを設置して発電できた発電量のことを指します。つまり、太陽光発電の発電量に影響があるロス(損失)の要素に対して、どのくらい耐性があるかを示した数値といえます。

太陽光発電の「実発電量」で実績があるのは、熱損失に強いCIS太陽電池モジュールを採用しているソーラーフロンティアや、発電量が落ちる曇りの日でも高い発電量を確保できるQセルズがなどが挙げられます。

発電量シミュレーション・計算式

ご自宅に太陽光発電システムを設置した場合の発電量は、事前にシミュレーションを使用して予測することができます。予測できるのは、年間発電量や1日あたりの発電量です。

年間発電量と1日あたりの発電量

太陽光発電システムの発電量は、まず太陽光発電メーカーなどが公式サイトで提供している「発電量シミュレーション」を使用することで、年間発電量を導き出すことができます。

東京都の年間発電量

年間発電量:4568kWh
※「設置容量:約4kWhシステム」、「傾斜角度:20度前後」、「設置方位:南」の条件にて算出。
※発電量は目安です。設置するシステム容量や環境などによって異なります。

次に、「発電量シミュレーション」で導き出された年間発電量を「365」で割ることで、1日あたりの平均発電量を算出することができます。

東京都の1日あたりの発電量

1日あたりの発電量:12kWh
※「設置容量:約4kWhシステム」、「傾斜角度:20度前後」、「設置方位:南」の条件にて算出。
※発電量は目安です。設置するシステム容量や環境などによって異なります。

これで、東京都で太陽光発電を設置した際の1日あたりの発電量が「12kWh」程度であることがわかりました。あくまでも平均値なので必ずしもこの値通りではありませんが、太陽光発電システムを新たに導入する場合や、既に導入していて1日の発電量が気になる場合は参考にしてみてください。

kWhってなに?

太陽光発電におけるkWh(キロアットアワー)という数値は、太陽光発電が「一時間で発電できる発電量」を表しています。「4kWhの太陽光発電システム」という場合は、「1時間あたりに4kW発電できる太陽光発電システム」という意味になります。

発電量シミュレーション・計算式

発電量を算出するには、太陽光発電メーカーなどが公式サイトで提供している「発電量シミュレーション」を使用するのが最も簡単で正確です。住んでいる地域や設置する予定のシステム容量、設置する太陽光パネルの角度などを入力するだけで、年間発電量の予測が導き出せます。

また、手動で計算を行いたい場合は、以下の計算式で導き出すことができます。なお、計算式の中で「365」を掛けなければ、1日あたりの発電量ということになります。

Ep=H×K×P×365÷1

計算式の意味は、次のとおりです。

  • Ep=年間予想発電量(kWh/年)
  • H=設置面の1日あたりの年平均日射量(kWh/m2/日)
  • K=損失係数:約85%
  • ※太陽光発電を行う際に発生するロス。一般的に約85%。

  • P=システム容量(kW)
  • 365=年間日数
  • 1=標準状態における日射強度(kW/m2)

上記の計算式を使うことで、手動で発電量を導き出すことは可能ですが、より正確な数値を知りたいのであれば、太陽光発電メーカーなどが公式サイトで提供している「発電量シミュレーション」の使用をオススメいたします。

発電量は日本国内でも都道府県ごとに違う

太陽光発電の発電量は、日本国内であっても都道府県ごとに異なります。都道府県ごとの発電量を左右しているのが、太陽光の量を表す「日射量」と、太陽が地上を照らしている時間を表す「日照時間」です。

発電量が異なる理由は「日照時間」と「日射量」

太陽光発電システムの発電量を左右している要素に、「日照時間」と「日射量」があります。

  • 日照時間:1日のうち、雲などに遮られない直射日光が地上を照らした時間。
  • 日射量:一定時間に太陽から降り注ぐ光の強さを表しています。

日射量が多く、日照時間が長い地域ほど、太陽光発電システムが発電できる時間が増えるため、発電量も多くなります。ただし、沖縄など日射量が強い地域でも、日照時間がさほど長くなかったり、気温が高いため太陽光パネルに熱損失が発生するなどの原因で、発電量はそこまで多くはありません。

発電量が多い都道府県BEST5

上記で紹介した日照時間と日射量を元に、日本国内で発電量が多い都道府県の上位5位を見てみましょう。

  • 山梨県:5,413kWh/年(2,187時間/年間日照時間)
  • 岐阜県:5,157kWh/年(2,134時間/年間日照時間)
  • 愛知県:5,147kWh/年(2,168時間/年間日照時間)
  • 和歌山県:5,120kWh/年(2,154時間/年間日照時間)
  • 三重県:5,112kWh/年(2,143時間/年間日照時間)

※発電量は「設置容量:約4kWhシステム」、「傾斜角度:20度前後」、「設置方位:南」の条件にて算出。
※発電量は目安です。設置するシステム容量や環境などによって異なります。

上記の発電量BEST5は、日射量が多く日照時間が長い都道府県ということになります。

発電量が少ない都道府県

反対に、発電量が少ない都道府県の下位5県も見てみましょう。

  • 山形県:4,541kWh/年(1,683時間/年間日照時間)
  • 富山県:4,425kWh/年(1,679時間/年間日照時間)
  • 島根県:4,424kWh/年(1,663時間/年間日照時間)
  • 青森県:4,385kWh/年(1,622時間/年間日照時間)
  • 秋田県:4,321kWh/年(1,673時間/年間日照時間)

※発電量は「設置容量:約4kWhシステム」、「傾斜角度:20度前後」、「設置方位:南」の条件にて算出。
※発電量は目安です。設置するシステム容量や環境などによって異なります。

上記を見るとわかるように、東北や日本海側の地域は日射量・日照時間ともに少ないため、太陽光発電システムの発電量は太平洋側の地域よりも少なくなってしまいます。もっとも多い山梨県と、もっとも少ない秋田県の年間発電量を比べてみると、実に「1,092kWh/年」もの差があります。

ただし、低照度に強い太陽電池モジュールを選んだり、太陽光パネルにコーティング剤を施すことにより、日射量・日照時間が少ない地域でも発電量を伸ばすことができる可能性があります。

日射量が少ない地域で発電量を上げる工夫

日射量が少ない地域や日照時間が短い地域など、太陽光発電システムの発電に不向きな地域でも、工夫次第で太陽光発電システムの発電量をアップさせることができます。

低照度に強い太陽電池モジュールを選ぶ

太陽の光が弱い「低照度」の土地ドイツで生まれた「Qセルズ」の太陽電池モジュールは、日射量が少ない「低照度」の土地でも十分な発電量を確保できるように設計されています。また、日照時間が短く曇りが多い地域でも、「Qセルズ」の太陽電池モジュールなら、晴れの日に比べて97~98%の発電量を確保できます。(条件:晴れの日の5分の1の照度)

太陽光パネルにコーティング剤を施す

太陽光パネルにコーティング剤を施すことによって、光透過率(光が太陽電池に到達する確率)をアップさせることができます。光透過率が上がることで、日射量が低い低照度の地域でも、発電量を底上げすることができます。

また、コーティング剤は太陽光パネルにつく汚れを防ぐ効果もあり、太陽光発電システムのロス(損失)の要因となっている「汚れ」から太陽光パネルを守る役割も期待できます。

ただし、コーティング剤を施すことによって、メーカー保証が受けられなくなる場合も存在します。コーティング剤を検討される場合は、購入する太陽光発電メーカーの保証内容をよく確認しましょう。

出典元

本記事内の日照時間、日射量のデータについては、以下サイトを参考にしています。

総務省統計局「統計でみる都道府県のすがた」

NEDO日射量データベース