
10年で70万赤字?2022年の蓄電池メリットとデメリット
目次
蓄電池を導入するデメリット
現時点では経済メリットでペイするためには10年以上かかる
家庭用蓄電池を導入することで電気代の節約は可能ですが、現時点では正直、経済的に単純に太陽光のように10年程度で元を取れるか?という質問に対しては「NO」のケースの方が多いです。
その細かい理由は後ほど述べるとしても、主流となっている定置型の蓄電池のほとんどが100万円以上の導入コストがかかるため、蓄電池のみでは電気代の節約額だけで初期費用を回収できる見込みは低いです。
経済的なメリットを回収しようと思うと、比較的イニシャルコストが安い蓄電池および太陽光発電との組み合わせが必須になっており、売電価格が低い方に限られるでしょう。
蓄電池は「電気の保険」と考えてみよう
ただし、現時点で住宅用の定置型蓄電池を導入する理由としては、単純に元が取れないから止めておこう、ではなく「突然の災害や停電に備える保険」と「多少の節約」という意味合いが大きくなります。
また、「元を必ず取らないといけない」というのが太陽光発電での通例になっていますが、元々住宅設備機器は、キッチンやドアにしても「元を取れるから設置する」というものではなく、役割がありそれに価値を感じて購入することが当たり前かと思います。
もし「元を取らないといけない」という考えをお持ちであれば、こちらの記事をご覧いただいて参考にしてみてください。
今後は安い蓄電池が増えて経済性がアップする可能性も
2019年から始まった卒FIT(太陽光発電の売電が10年目で満了すること)により、蓄電池の需要は年々増加傾向になっており、この数年では特に顕著です。
これに合わせて、各メーカーからこれまでより割安な家庭用蓄電池が続々登場することが期待されていますが、2021~2022年現在では劇的な価格下落は進んでいませんが、メーカーやシリーズによっては手の届きやすいコストで設置が可能になってきました。
太陽光のように破格的にコスト低減が進まない理由は、
- リチウムイオン電池の原材料となっているレアメタルの価格上昇
- 世界的な蓄電池および半導体需要の高まり(住宅用・産業用・EV用)
これらが市場需要の拡大に伴う価格下落を抑制している原因の一つです。
そのため、補助金があるうちが意外にトク?という見方をされている方もいます。
国内メーカーでは、なかなか価格下落がモデルチェンジによって進んでいない状況はありつつ、アメリカのテスラから容量13.5kWhで定価99万円(税別)の「パワーウォール」という蓄電池の発売がされています。
10kWh前後で150~200万円程度が相場だったこれまでの蓄電池に比べると、破格と言えます。
単機能型でも太陽光との連携やスマホ連携ができ、施工店も2021年時点では全国で11社と次第に施工体制も拡大してきました。
ただJET認証が下りていないため(2021年下旬時点)、オーダーをしても設置には少し時間がかかりそうです。
テスラ蓄電池パワーウォールについては以下の記事で解説しています。 お得に購入!テスラ蓄電池パワーウォールの価格と認定施工店一覧
関東のパワーウォール認定施工店では3万円分の特典あり
関東のテスラパワーウォール認定工事店「横浜環境デザイン」では2023年3月31日まで、パワーウォール成約方限定でAmazonギフト券30,000円分プレゼントの特典がついています。(施工エリア:神奈川県、東京都、千葉県、茨城県、埼玉県の関東エリア)
詳しくは横浜環境デザイン「テスラパワーウォール」のページをご確認下さい。
このように、割安な蓄電池が一般的になれば、蓄電池の経済メリットもアップして普及してく可能性もありますが、太陽光発電システムの価格下落よりは少し時間が掛かりそうな印象です。
蓄電池の経済効果について詳しくは、以下のリンク先をご覧ください。
価格(導入費用)が高い
蓄電池のデメリットは、導入するための費用が高額なことです。
家庭用蓄電池の価格を一番左右するのは、蓄電池が電気を貯めることができる「容量」です。
単純に、2kWhなど少ない容量の蓄電池は安く、10kWhなど大容量になるにつれて比例的に高額になります。
また、定置型蓄電池には
- 太陽光発電と停電時にもうまく連携できる「ハイブリッド型」
- 太陽光発電システムから独立している「単機能型」
の2種類が存在しており、太陽光で発電した電気を有効に使える「ハイブリッド型」の方が高額となります。
そのため、価格だけでなく使い方をよく考えて蓄電池を選択する必要があります。
ハイブリッド型
太陽光発電システムのパワコンとうまく連携を行い、発電した電気を有効的に蓄電池へ貯めることができたり、停電時には太陽光発電で発電する電気を単機能型に比べて、有効的に貯めることができます
単機能型
太陽光発電システムからは独立しているタイプの為、蓄電池の容量の割には安価ではある反面、停電時に太陽光発電の電気をしっかり蓄電池へ貯めることが苦手です。(停電時には、太陽光発電の自立運転で1500Wしか取り出しができませんが、その1500Wの中から、照明やテレビ等で使った余った電気を蓄電池へ回すためです。)
参考までに、大まかな蓄電池の価格(施工費込み)がこちらです。
- 容量1kWhごと(材工):税抜16.5~20万円前後
この価格の下限である「16.5万円」は、2021年度の補助金の中に設定されている金額が1つの目安です。
このDER補助金は、販売店からお施主様への設置目安価格が提示されており、蓄電池の商品代+工事費用で165,000円 / kWh 以内になっていること、が補助金が出る条件でした。
ただ、この価格は一部のメーカーやシリーズではクリアすることができない側面のあり、実際の販売価格としては、かなり安い設定になっています。
ハイブリッド型と単機能型の違いやメリットデメリットは以下の記事で解説しています。 単機能型とハイブリッド型蓄電池の違いとメリット・デメリット
最近では低価格の蓄電池も登場
テスラより発売開始されている、容量13.5kWhで定価99万円(税別)の「パワーウォール」という蓄電池が圧倒的に安価です。
材工費用合算しても、1台あたり約150万円前後~設置が可能で、先ほどの目安価格を大幅に下回っています。
テスラの場合、電気自動車を製造しているラインと同じラインで、住宅用蓄電池の電池も製造しているため、他社に比較して圧倒的な量の電池の製造を行っている点が強みです。
そのため、他社が追従してマネすることが非常に困難な領域にきていると推測されます。
テスラ蓄電池パワーウォールについては以下の記事で解説しています。 お得に購入!テスラ蓄電池パワーウォールの価格と認定施工店一覧
関東のパワーウォール認定施工店では3万円分の特典あり
関東のテスラパワーウォール認定工事店「横浜環境デザイン」では2023年3月31日まで、パワーウォール成約方限定でAmazonギフト券30,000円分プレゼントの特典がついています。(施工エリア:神奈川県、東京都、千葉県、茨城県、埼玉県の関東エリア)
詳しくは横浜環境デザイン「テスラパワーウォール」のページをご確認下さい。
フル充電でも使い方によっては半日~1日しかもたない
蓄電池には「5kWh」や「10kWh」などの容量上限があり、その上限までしか電気を貯めることができません。
そのため、非常時や停電時にそなえて満タンまで充電しておいたとしても、蓄電池の容量によって停電時に家電を使用できる時間が変わってきます。
例えば3kWh(3,000Wh)の蓄電池なら、単純計算では
- LED照明(40W)なら75時間
- テレビ(150W)なら20時間
- エアコン(700W)なら4.2時間
程度の時間、家電を動かすことが可能です。
なお、家電の稼働可能時間は、家電ごとのワット数によって変化します。
蓄電池は充電容量全てを使えるわけではない
蓄電池で稼動できる家電の目安の話をしましたが、注意点があります。
リチウムイオン蓄電池の性質上、フル充電・フル放電をすると電池を劣化させてしまう原因位になります。
また、蓄電池の電気を使い切ってしまう事は「自動車のバッチリーあがり」と同じ現象になるため、実際は90%~約10%前後までしか実際には使用することができません。
この条件はメーカーによっては、適用されない場合もありますが、多くのメーカー・シリーズでこのような条件があり、初期設定で上限と下限を設定する機種が多いです。
蓄電池の容量や種類について、詳しくは以下の記事をご覧ください。 蓄電池とは?FIT売電10年目が終了する人の救世主って本当? 蓄電池の種類は?太陽光と連携可能な機種や工事不要のタイプも
停電時に1日で使う電力は約5,500W
実際の停電時、照明のほかにも冷蔵庫・テレビ・携帯充電器・電子レンジ・パソコンなども使用しますよね。
非常時や停電時、節電しながら使ったとして1日に必要な電力は約5,500W程度と予想されます。
そのため蓄電池を導入する場合、最低でも単純には5kWh以上の容量がある機種を選ぶべきでしょう。
ただ、太陽光発電システムが併設されている場合、日中は太陽光発電の電気を蓄電できますので、停電の不安から必要以上に大容量の蓄電池を選択しないように気を付けましょう。
オススメの蓄電池容量は7kWh~13kWh前後までです。
停電時に必要な電力について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。 蓄電池とは?FIT売電10年目が終了する人の救世主って本当?
蓄電池に寿命がある
蓄電池も一般の家電と同じように寿命(耐用年数)があります。
蓄電池の寿命は、年数ではなくサイクル回数(残量100%の満充電から残量0%の完全放電までを行った回数)で表わされます。
例えば、ニチコンの12kWhタイプの蓄電池「ESS-H1L1」の場合、サイクル回数が「6,000サイクル」で、1日1サイクル使用した場合の寿命年数は「約16年」程度となっています。
蓄電池本体の保証は10年~15年
またメーカーによって蓄電池の耐用サイクル回数は異なりますが、サイクル数を公表しているメーカーの方が少なく、実際の保証は年数として10年~15年で保証を行ってくれるメーカーが多いです。
保証については、無料では何年か?または有料の場合のプランを用意していれば何年でいくらか?は確認した方が良いでしょう。
また、仮に15年まで保証が伸ばせるのであればKWあたり1万円ぐらいの保証金額であれば保証を付帯することをおすすめします。
蓄電池の寿命について、さらに詳しくは以下の記事をご覧ください。

リチウムイオン蓄電池の寿命は何年?メーカー別に耐用年数を比較
38,526view設置スペースが必要になる
家庭用蓄電池を導入する場合、屋外または屋内に設置スペースを確保する必要があります。
容量の大きな「定置型」家庭用蓄電池を設置する場合、幅60cm~120cm×奥行30cm~60㎝×高さ70cm~120cm程度のスペースが必要になります。
また蓄電池本体のサイズだけでなく、メーカーそれぞれで蓄電池の周囲から何cmはモノを置かないでください、という離隔距離が設定されている場合がありますので、設置の際は工事業者と事前にしっかり確認しましょう。
設置スペース以外にも「高温や低温になりすぎない」や「結露しない」といった条件も満たさないといけないため設置場所は、屋外であれば建物の北側、風通しが良いところ。
屋内であれば密閉されていない納戸やクローゼット、玄関周辺などがおすすめです。
また、蓄電池本体とパワーコンディショナー以外に必要なものとしては、
- リモコン(壁付けのタイプが多い)
- 電力切替分電盤(特定負荷タイプの場合)
- 計測機器(メーカーによる)
が想定されます。
各メーカーやタイプによって設置する周辺機器は変わってきますので、工事前に確認してみて下さい。
蓄電池の種類について、詳しくは以下の記事をご覧ください。 蓄電池の種類は?太陽光と連携可能な機種や工事不要のタイプも
蓄電池を導入するメリット
卒FIT(売電が10年目で終了)の人にメリット大!
蓄電池を導入すると、固定価格買取制度(FIT)による10年間の売電期間が終了した人に大きなメリットが期待できます。
売電開始から10年(全量は20年)で「卒FIT」
FIT(余剰電力買取)制度は2009年から始まっていますが、この権利は設置から10年(2009年以前に設置済みの方は2009年を起点として10年)のため、2019年から徐々に設置された方順に、売電期間である10年間が終了して、売電価格が一気に下落します。
こうした高額での余剰電力の買取権利が失効する人たちを「卒FIT」などと呼んだりもしますが、問題となるのは売電終了後の対応です。
「卒FIT」を迎えた人の選択肢は、大きく分けて
- 電力会社と契約し直して売電価格を見直して売電継続
- 定置型蓄電池を増設して「自家消費型」太陽光として活用
の2つです。
電力会社と契約し直して売電価格を見直して売電継続
FITが満期を迎えたら、電気の買い取りを行っている電力会社と契約を結び直し、売電を行うというのが1つ目の選択肢です。
ただし、売電価格は「6~9円」程度が相場となっていますので、FIT制度で売電していた頃と比べると大幅に下がってしまいます。
単純には48円で買取されていた方が、例えば8円になった場合は6分の1になりますので、仮に月額平均で15,000円前後の売電が出来ていた場合、2,500円前後になってしまい、月額で12,500円の収入減です。
正直、日中に在宅が少ない方には恩恵はかなり減り、メリットも激減と言わざるを得ません。
定置型蓄電池を増設して「自家消費型」太陽光として活用
2つ目の選択肢は、定置型の蓄電池を増設して自家消費型太陽光発電として利用する方法です。
自家消費型とは、太陽光発電で作った電気を自宅で優先的に使用し、余った電気を売電せずに蓄電池へ貯めて、早朝や夜に使用することで節約につなげることです。
これにより電力会社から購入する高い単価の電気を減らせるため、電気代の節約につながります。
「自家消費型」太陽光の方が1kWhあたり16~17円経済的
現在の全国の電力会社の、電気代の単価をみても売電するより、電力会社からの電力購入を抑えたほうが、結果的には経済的です。
要するに8円で売電するより、自分でためておいて25円以上(平均買電単価)+約3.36円(2021年度再生可能エネルギー賦課金)の約28円(平均買電単価)の電気を買わないようにする、という考え方です。
東京電力「夜トクプラン」の場合
- 電力会社へ電気を売る(売電)価格:6~9円/1kWh
- 電力会社から電気を買う(買電・日中)価格:32.74円/1kWh
- 再生エネルギー賦課金(買電)+価格:3.36円/1kWh
※売電単価は契約する電力会社や売電プランにより異なります。
※電気を買う場合、再生エネルギー賦課金:3.36円/1kWhが付加されます。
※電気の価格は、2021年12月時点での情報です
太陽光発電単体では、太陽が出ていない夜間や雨の日などは発電を行えません。
そのため、卒FITで蓄電池を設置していないと、このような状態になります。
- 電力会社から、高い電気(夕方~夜)を購入しないといけないこと
- 晴れている日中は、安い単価で電気がどんどん売られていく状態
この点をカバーしてくれるのが住宅用の定置型蓄電池です。
蓄電池を導入することで、できることはこちら。
- 家庭内で自家消費しきれなかった太陽光発電の余剰電気
- 夜間の安い電気を貯めておき、太陽光発電が稼働しないときに使用することが可能
※夜間の電気代が安いのは「時間帯別契約」を契約している場合のみ
蓄電池の導入より、電力会社からの買電をさらに減らすことができ、よりお得なエコライフを送ることができるでしょう。
太陽光発電との連携でお得・便利に
太陽光発電で創った電気を蓄電池は貯められることができ、太陽光発電と蓄電池が組み合わさることで、以下3つのメリットがあります。
電気会社からの買電量を減らす
これまでは、太陽光発電が電気を創れない雨天時や夜は、電力会社から電気を買うしかありませんでした。
蓄電池を導入することで、以下のことができるようになります。
- 太陽光発電が電気を創れないとき、蓄電池に貯めておいた電気を使う
- 太陽光発電の余剰電力を蓄電池へためる
- 安い深夜電力をためておくことができる
これらの操作により電力会社からの買電量を減らすことができ、電気代の節約に繋がります。
「ダブル発電」で売電量を増やせる
蓄電池と太陽光発電を組み合わせることで、蓄電池に電気代が安い夜間の電気を貯めておき、日中の家庭内電力は蓄電池の電気でまかない、太陽光発電の売電量を増やす「ダブル発電」を行えるようになります。
(ダブル発電の稼働ができる機種とそうでない機種があります。できない機種の方が多いので、これを期待される方は選定に注意しましょう)
ただし、2018年度以前に太陽光発電を設置した場合、ダブル発電にすると売電価格が下がってしまったり、売電価格の見直しが入って売電価格が大幅に下がるケースもあるので、設置業者とよく相談して設置しましょう。
長期間の災害時でも電気を使用可能
停電時や非常時でも昼間は太陽光発電が創った電気を家庭内で使用し、使いきれなかった余剰電力を蓄電池に貯めて夜間に使用することで、停電が長引いても電気を使用した生活を送ることができます。
(ハイブリッド型の場合はしっかり充電できます。単機能の場合は少量のみ充電可能)
ハイブリッド型と単機能型の充電の違いは以下の記事で解説しています。 単機能型とハイブリッド型蓄電池の違いとメリット・デメリット
停電時・非常時でも電気が使用可能
家庭用蓄電池を導入すれば、停電時や非常時でも蓄電池にためた電気を使用できるので、家電も使うことができます。
蓄電池には「全負荷型」と「特定負荷型」の2つのタイプがあり、それぞれ停電時の電力供給の働きが異なります。
「全負荷型」は家全体の電力をバックアップ
「全負荷型」蓄電池は、停電が起こると家全体の電力を瞬時にバックアップするため、すべての家電を普段と変わらずに使うことができます。
そのため、電力を供給できる場所が限られる「特定負荷型」蓄電池のように、どの部屋に電気を送るべきか制限する必要はありません。
災害に備えて全部の部屋でどうしても電気を使いたい、給湯器やエアコンも使いたい!という方には「全負荷型・200V出力タイプ」がオススメです。なお、「全負荷型」蓄電池は容量10Wh以上の大容量タイプが多いです。
ただし、全負荷型で注意が必要なのが「使い過ぎ」です。
家全部で普段通り使えてしまうので、気にせう電気を使っていると、エアコンや給湯器を動かすと意外に早くなくなってしまいます。
また、一度に使用できる出力にも限界がありますので、一気に使うと蓄電池がシステムダウンして電気が一時的に止まります(最大出力が3,000W~5,000Wが多い)
- 一般家庭の1日の平均電気使用量:10kWh~20kWh(オール電化であれば20kWh以上)
- エコキュート:一晩で4kw前後消費
全負荷型の蓄電池は、単機能型の蓄電池である機種が多いです。
また単機能型の場合、太陽光発電の電気をうまく連携して充電をしっかりできないため、補充もしにくいのがデメリットです。
「特定負荷型」は特定の回路に電力を送る
「特定負荷型」蓄電池は、停電が起こると「特定負荷用分電盤」に接続している回路にのみ電力を供給します。
「特定負荷型」蓄電池は一度に使用できる電気量に上限があるため、家全体の電気をバックアップすることができません。
そのため、あらかじめ停電時に「どの回路に電気を送るか?」を決めておく必要があります。
たとえば、一階リビングと台所の回路を「特定負荷用分電盤」に接続した場合、リビングの照明や台所の冷蔵庫などは停電時でも使用することが可能ですが、接続していない2階などの家電は使用することができません。
なお、容量4~6kWh前後の商品は、「特定負荷型タイプ」が多いです。
その理由は、容量がコンパクトなため、特定負荷で使用を制限した方が無難であるからです。
ただ、こういった特定負荷型の蓄電池は、ハイブリッド型が多いです。
ハイブリッド型であれば、太陽光発電システムとの連携がうまくでき、翌朝晴れていればたっぷり充電できるため「必要以上に大容量が不要」という考え方もあります。
特定負荷型は、「全負荷型」に比べると蓄電池の容量・サイズがコンパクトで安価に抑えやすく、太陽光発電システムと同時には導入がしやすいタイプです。
なお、「特定負荷型」蓄電池はほとんどが100V出力の為、200V出力が必要なIHやエコキュート、容量の大きいエアコンなどは稼働できません。
停電時にどの部屋でどの家電を使って過ごすのか、優先順位をつけてプランする必要もあります。
電気代を節約可能
「時間帯別契約」を契約している場合、家庭用蓄電池を導入することで深夜電力を活用した節約も可能となります。
その方法は、オール電化プランにより安くなった深夜電力を蓄電池に貯めておき「朝夕の時間帯、もしくは雨天時に放電して電力会社からの買電量を減らす」というものです。
次の項目では、現時点での蓄電池の経済効果について検証していきます。
蓄電池の経済メリットをシミュレーション
はじめに、蓄電池の経済メリットを左右する要素について解説します。
なお、ここでご紹介するシミュレーション結果は、蓄電池と太陽光発電を同時設置している場合を前提としています。
経済モードとグリーンモード
蓄電池の運転モードには、太陽光発電の売電を優先する「経済モード」(売電優先モード)と、自宅での電力消費を優先して電力会社からの買電量を減らす「グリーンモード」(環境優先モード・自家消費モード)の2つがあります。
経済モード(売電優先モード)
経済モードは、主に太陽光発電で創った電気を電力会社に売る「売電」をメインに考える運転モードです。
売電価格が30円台後半でできている方にオススメのモードです。
経済モードは、オール電化プランによって割安になった夜間の電気を蓄電池に充電し、その電気を夜間以外の太陽光発電が発電を行えない時間帯(朝方や夕方など)で放電する運転モードです。
これにより、太陽光発電での売電はそのまま行いつつ、夜間の安い価格で購入した電気を昼間に使用できるようになります。
グリーンモード(環境優先モード・自家消費モード)
グリーンモードは、主にFIT(固定価格買取制度)による10年間の売電期間が満了した「卒FIT」の方や、太陽光発電の導入が2010年代の後半以降で売電単価が30円前後~20円台の方にオススメのモードです。
グリーンモードは、太陽光発電で創った電気を自宅で消費し、余った「余剰電力」を蓄電池へ充電するモードです。
蓄電池に貯めた電気は、太陽光発電が発電を行えない時間帯(朝方や夕方など)に放出し、電力会社からの買電をできるだけ抑えます。
ダブル発電とシングル発電
FIT(固定価格買取制度)の売電期間内に蓄電池を設置する場合、蓄電池の「押し上げ効果」によって、ダブル発電とシングル発電に分かれます。
ダブル発電
ダブル発電とは、蓄電池に電気代が安い夜間の電気を貯めておき、日中に家庭内で使用する電力は貯めておいた蓄電池の電気でまかない、太陽光発電で売電できる電力量を増やすというものです。
このダブル発電は2018年以前に太陽光発電を設置している家に、ダブル発電機能が付帯している蓄電池を設置した場合、ダブル発電となり売電単価が下がってしまします。
2019年度以降、太陽光発電と蓄電池を同時設置する場合には売電単価は変わりません。
シングル/ダブル発電の売電価格の推移
- 2011~12年度(kWh):シングル発電42円/ダブル発電34円
- 2013年度(kWh):シングル発電38円/ダブル発電31円
- 2014年度(kWh):シングル発電37円/ダブル発電30円
- 2015年度(kWh):シングル発電33円/ダブル発電27円
- 2016年度(kWh):シングル発電31円/ダブル発電25円
- 2017年度(kWh):シングル発電28円/ダブル発電25円
- 2018年度(kWh):シングル発電26円/ダブル発電25円
※太陽光発電10kW未満、出力抑制なしの場合
なお、ダブル発電を行いたい場合は、「押し上げ効果あり」の蓄電池を購入する必要がありますが、売電単価が安い場合はメリットとしては低いのが現状です。
シングル発電
ダブル発電にならない「押し上げ効果なし」の蓄電池を導入した場合は、シングル発電となります。シングル発電の場合、太陽光発電が発電している中で、余剰電力が発生している時間帯は蓄電池から住宅側へ放電ができないようになっています。
経済性モード時の経済メリット
シミュレーション条件
- 蓄電池:パナソニック・創蓄連携タイプ
- 容量:5.6kWh
※1日で4.5kWh使うと仮定 - 導入費用:約130万円(蓄電池定価+工事費用)
- 電力プラン:東京電力「夜トクプラン」
- 日中電気単価(午前7時~午後11時):32.74円/kWh
- 深夜電気単価(午後11時~午前7時):21.16円/kWh
- 再生可能エネルギー賦課金:3.36円/kWh
※価格や電気代は2021年12月時点の情報です。
ただし、上記のシミュレーションは現在の電気代から計算した単純なシュミレーションで、「電気料金が値上げされる可能性」は全く考慮していません。
電気料金が値上げについては以下で説明しています。
>> 電気料金は気づかないうちに値上げされてる?
初期費用は約130万円
蓄電池「パナソニック創蓄連携システム」を導入した場合、初期費用は約130万円ほど必要です。(この計算はリモコンや切り替え分電盤等の周辺部材は参考の為除く)
初期費用の内訳は以下の通りです。
- 商品代(蓄電池本体):約100万円
- 工事費など:約30万円
経済モードでは、毎月1,620円の電気代を節約
蓄電池の経済性モードを使用した場合、夜間の安い電気代を蓄電池に貯めておき、太陽光発電が発電を行えない朝夕、夜間などに使用することで、昼間の電気代「36.1円」と夜間の電気代「24.52円」の差額分「約12円/kWh」がお得になります。
蓄電池「パナソニック創蓄連携システム」に貯められる電気は4.5kWhですので、
1日あたり4.5kWh✕約12円=54円お得になり、
1ヶ月で54円✕30日=約1,620円の電気代を節約できる計算になります。
10年間で約20万円の電気代を節約
上記でご紹介した通り、1ヶ月で1,620円お得になるので、
1,620円✕12ヶ月✕10年=194,400円の電気代を節約できる計算になります。
10年間トータルでは約110万円の赤字?
初期費用で必要となる「130万円」から10年間で節約できる電気代「約20万円」を引くと、
蓄電池費用130万円-10年間の電気代節約分194,400円=1,105,600円
という計算になります。
この結果、蓄電池を導入して経済モードで運用した場合、10年間でトータル約110万円の赤字という結果になることがわかりましたが、あくまでも商品代は定価で計算している為、設置条件や取り扱い業者によっては、この収支以下になることは想定できることと、この数値は経済モードのみでの運転時のケースになります。
※太陽光発電を併設していないパターンです
※購入する蓄電池の金額や容量、契約している電力プランにより収支は異なります。
グリーンモード時の経済メリット
シミュレーション条件
- 蓄電池:パナソニック創蓄連携システム
- 容量:5.6kWh ※1日で4.5kWh使うと仮定
- 導入費用:約230万円(蓄電池定価+太陽光市場価格(20万円/kWh)+工事費用)
- 太陽光発電容量:5kWh
- 電力プラン:東京電力「夜トクプラン」
- 日中電気単価(午前7時~午後11時):32.74円/kWh
- 深夜電気単価(午後11時~午前7時):21.16円/kWh
- 再生可能エネルギー賦課金:3.36円/kWh
※価格や電気代は2021年12月時点の情報です。
ただし、上記のシミュレーションは現在の電気代から計算した単純なシュミレーションで、「電気料金が値上げされる可能性」は全く考慮していません。
電気料金が値上げについては以下で説明しています。
>> 電気料金は気づかないうちに値上げされてる?
初期費用は約230万円
蓄電池「パナソニック創蓄連携システム」を導入した場合、初期費用は約130万円ほど必要です。
なお、環境優先モード(グリーンモード)を使用している場合、太陽光発電の併設が前提になるため、新築する場合の太陽光発電5kWhの費用としては、100万円も前提条件に入れています。
卒FITの試算の場合は、売電で既に初期コストは回収済みとして計算に入れないこととします。
初期費用の内訳は以下の通りです。
- 商品代(蓄電池本体):約100万円
- 蓄電池工事費:約30万円
- 太陽光発電・材工費用:約100万円(新築時に設置する場合のみに算入)
【新築で導入の場合】毎月11,960円の電気代を節約で16年でペイ
新規で太陽光発電を設置する場合、2021年度の売電単価は19円 / kWh、2022年度の売電単価は17円 / kWhとなっており、安い単価でしか売電ができません。
既に買う電気より、売る電気の方が安くなってしまっています。
太陽光発電で創った電気を蓄電池にため、朝・昼間(余剰がない状態の場合)・夜間に使用する環境優先モード(グリーンモード)での運転がメインになります。
環境優先モード(グリーンモード)では、昼間の電気代「約33円/kWh」+「再生可能エネルギー賦課金の約3円」の合計36円/kWhの高い電を、太陽光発電+蓄電池によりほぼ買わずに済みます。
自己消費率は5.6kWhで約50%(パナソニック調べ)のため、オール電化の家庭における平均的な電力使用量が600kWhであることから、半分の300kWhを太陽光+蓄電池でカバーできると仮定します。
深夜電力の時間帯以外の買電量を、太陽光+蓄電池で約半分にしたとすると、平均単価約30円×300kWh=約9,000円の買電をせずに済んでいる計算になります。
売電は安い単価でしか売電できないとはいえ、新築の場合は2021年度の売電単価は19円 / kWh、2022年度の売電単価は17円 / kWhで売電が可能です。
余った電気は売電してさらに収益性を高めていきます。
5kWhでの1ヶ月の平均売電量は、一般的な発電量450kWhの約7割300kWhですが、蓄電池へ充電する分▲100kWh(4.5kWh×22日)を加味して、200kWhを売電と仮定します。
1ヶ月の平均的な収支の合計:11,960円
内訳
- 売電:3,800円(450kWh×7割-100kWh×19円)
- 自己消費分(太陽光):4,860円(450kWh×3割)
- 自己消費分(蓄電池):3,300円(100kWh×33円)※朝夕と昼の平均買電値
初期コストの230万円を毎月の節約・売電金額で割り算すると、約16年で初期コストをペイすることになります。
【卒FITの場合】毎月4,860円の電気代を節約
仮に48円で売電できていたFITの満期を迎えた太陽光発電を所有していて、蓄電池を後から導入してグリーンモードで運用した場合をサンプルとして想定します。
太陽光発電で創った電気を蓄電池にためて朝・昼間(余剰がない状態の場合)・夜間に使用するため、昼間の電気代「約33円/kWh」+「再生可能エネルギー賦課金の約3円」の合計36円/kWhをほぼ買わずに済みます。
なお、FIT10年間の売電収入により太陽光発電の初期費用は回収されていることが前提となるため、発電コストは0円として計算しています。
蓄電池「太陽光発電システム5.6kWh」に貯められる電気は実質4.5kWhですので、
1日あたり4.5kWh✕36円=約162円お得になり、
1ヶ月で162円✕30日=約4,860円の電気代を節約できる計算になります。
また、売電価格の下落分を補填してくれることも忘れてはなりません。
元々余剰電力が48円/kWhで売れていた電気が、8円/kWhに下落して40円の価値下落を、蓄電池があれば、昼間の電気代「約33円/kWh」+「再生可能エネルギー賦課金の約3円」の合計36円/kWhの価値にしてくれます。
これを考慮すると元々48円で売電できていた方からすれば、48円 – 36円で約12円分の価値があります。
グリーンモードでは10年間で583,200円の電気代を節約
上記でご紹介した通り、1ヶ月で4,860円お得になるので、
10年間で4,860円✕12ヶ月✕10年=583,200円の電気代を節約できる計算になります。
10年間トータルでは約70万円の赤字
初期費用で必要となる「130万円」から10年間で節約できる電気代「583,200円」を引くと、
蓄電池費用130万円-10年間の電気代節約分583,200円=716,800円
という計算になります。
この結果、太陽光発電を設置中に蓄電池を導入してグリーンモード(環境優先モード)で運用した場合、10年間でトータル約70万円の赤字という結果になることがわかりました。
※購入する蓄電池の金額や容量、契約している電力プランにより収支は異なります。
ダブル発電(押し上げの有無)のメリットはほぼ無い?
太陽光発電システムと、住宅用蓄電池を同時に導入する場合、もしくは既に太陽光発電システムが家に設置済みの方は、蓄電池を導入する際には、ダブル発電になるか否か?に気を付ける必要性があります。
また、2018年以前に太陽光発電を設置されている方は、このダブル発電によって売電価格が変わってくるため、より一層注意が必要です。
シングル/ダブル発電の売電価格の推移
- 2011~12年度(kWh):シングル発電42円/ダブル発電34円
- 2013年度(kWh):シングル発電38円/ダブル発電31円
- 2014年度(kWh):シングル発電37円/ダブル発電30円
- 2015年度(kWh):シングル発電33円/ダブル発電27円
- 2016年度(kWh):シングル発電31円/ダブル発電25円
- 2017年度(kWh):シングル発電28円/ダブル発電25円
- 2018年度(kWh):シングル発電26円/ダブル発電25円
- 2019年度(kWh):シングル発電24円/ダブル発電24円
※太陽光発電10kW未満、出力抑制なしの場合
ダブル発電とは?
「太陽光発電システムのみ」のご家庭で昼間の発電量が5kwあったとします。
そのうち住宅で消費している電力が2kwで、3kwを売電していたとします。
ここに「住宅用蓄電池」を導入して、住宅で消費している電力2kwを蓄電池からの電気でまかなえたとすると、太陽光発電システムで発電した5kwを全て売電することが可能となります。
これがダブル発電の仕組みです。
ダブル発電は売電単価が下がる
一見、これを見ると得になるような気がしますが、電力会社から見れば、例えば安い16円で売った深夜電力を蓄電されて、太陽光発電で発電した電気を40円等で買い戻している…というお粗末な話になります。
そのため、ダブル発電ができる方は、売電単価を本来の取り決め価格から少し大目にみてほしい、ということで、通常の売電単価より下がります。(2018年度の設備認定の方までの話です)
蓄電池のダブル発電はメリットがほぼ無い?
ダブル発電自体が、2018年以前の設備認定(太陽光設置)で売電価格が規定から下がる方と、2019年以降での設置されダブル発電の有無で売電価格が下がらない方と両方存在しますが、ダブル発電でメリットが出る方は限られています。
様々な電力契約のパターン等が存在しているため、一概に線引きができませんが、
大よそ売電価格が40円以上の高額で売電できている方は、2円程度売電単価が下がったとしても、ダブル発電で売電量を増やした方が得の場合が多いです。
ただしこの場合も、余剰電力が潤沢に発生するような屋根に5~6kw以上の太陽光発電システムが搭載されている方のみです。2~3kw程度の小さい容量では、発電量がそもそもあまり発生しないため、経済メリットが薄くなってきます。
メリットがない方は、売電単価が30円前半以下の方は、売電単価が更に下がる上にメリットがかなり低いです。理由は、安い単価の売電量を増やすより、高い単価の買電量を減らした方が結果的に得だからです。
現在、再生可能エネルギー賦課金が、買電量に一律に上乗せされます。
例えば時間帯別契約の場合に、仮に日中の買電単価が38円/kwh~28円だったとすると、
2021年度は3.36円/kWh上乗せされるため、実質的には日中は約38円+3.36円の合計約41円になるわけです。(中部電力のスマートライフプランの場合など)
そのため、例えば37円で売電できている方が、売電単価をわざわざ30円に引き下げて、深夜電力で16円でためた電気を使って押し上げしたとすると、
先程の「5kw発電で2kw自己消費」の例からみると、3kWh分の売電×37円=約110円/hの収入があります。
押し上げ効果を使ったとすると、5kWh分の売電×30円=150円/h、で単純には売電収入が40円増えますが、昼間に電気を使用していることから夜間は反対に、28円+3円の、約31円の電気を買っていることとなります。
タダで作った電気を30円で売って、31円で夕方になれば電気を買う…。こういった逆転現象が発生するので、売電価格か低い方は要注意です。
これから太陽光発電+蓄電池の両方新設する場合
これから太陽光発電システムと、蓄電池を新設される方は、ダブル発電の有無で売電価格が変更ありませんので、特に気にすることはありませんが、「なぜダブル発電でも売電単価が変わらないか?」
それは「結局、ダブル発電してもしなくても変わらないから(電力会社側が損をしないから)です」
先ほどの、経済メリットの件で触れましたが、売電価格が24円の場合であれば、結局24円で売電する量を増やすより、30円や38円という高単価での電気代を購入しない方が圧倒的に得だからです。
現在は、「売電で儲ける」という形ではなく「自己消費で高い電気を買う量を減らして自給する」というもとが、太陽光発電や蓄電池の大きな流れです。
そのため、蓄電池を購入検討する際は、押し上げありのものをあえて選ぶ必要はなく、押し上げありをウリにしているメーカーもかなり限られているのは、こういったことが理解し、押し上げやダブル発電を不要と判断しているからです。
基本的には、各メーカーで押し上げが基本的にはできない仕組みの蓄電池が主流となっております。こういった蓄電池であれば、売電価格に影響を及ぼさず、またグリーンモード(環境優先モード)での運用が最も経済効果を生みます。
2018年度以前に太陽光発電を設置済みで、蓄電池のみを後付け設置する場合
2018年以前に、設備認定(FIT適用で太陽光発電の売電をしている方)を保有している方は、売電価格の下落額に注意が必要です。特に「押し上げなし」の商品を選べば、売電価格に基本的には影響はありません。
電力契約や、電気の日々の使い方で一概には言えませんが、押し上げは現在の電力平均単価
などから考慮しても、特にオススメはしません。
設備認定の変更に関しては、細心の注意が必要!
太陽光発電システムで現在 売電が出来ていてる方は、「設備認定」というもので、自宅の太陽光発電が発電所として認められています。こちらの一覧のシングル発電の単価になります。
シングル/ダブル発電の売電価格の推移
- 2011~12年度(kWh):シングル発電42円/ダブル発電34円
- 2013年度(kWh):シングル発電38円/ダブル発電31円
- 2014年度(kWh):シングル発電37円/ダブル発電30円
- 2015年度(kWh):シングル発電33円/ダブル発電27円
- 2016年度(kWh):シングル発電31円/ダブル発電25円
- 2017年度(kWh):シングル発電28円/ダブル発電25円
- 2018年度(kWh):シングル発電26円/ダブル発電25円
- 2019年度(kWh):シングル発電24円/ダブル発電24円
※太陽光発電10kW未満、出力抑制なしの場合
蓄電池を増設する場合、基本的には設備認定で変更届けを出さないといけません。その際に気を付けなければならないのが、例えば42円の権利を保有していても、変更手続きを怠ったり、ちゃんとした手続きを踏まないと設備認定の権利を取り消しになったり、または現在時点での単価に下げられてしまうこともあります。
蓄電池のダブル発電でメリットが出るケースは?
先述した通り、現在の電力会社の単価(時間帯別契約)を鑑みると2010~2011年頃までに太陽光発電を設置された方になるケースが多いかと思います。
ただし、この時期の方は住宅用であれば10年でFITの権利が失効するため、もしダブル発電ができて得をしたとしても、時間としてはごく僅かな時間しか残っていないと思われます。
蓄電池の施工は、設備認定の変更許可が下りてからになるため、その認定が下りるのに数か月~半年程度かかるので、今こちらの記事を読んで蓄電池の設置をすぐ決めたとしても、その間に満10年が経ち、売電価格が9円~6円前後にさがってしまうため、押し上げに拘る必要はなかった…となってしまうはずです。
経済効果が高くないのに蓄電池を付けるのはナゼ?
蓄電池の経済メリットを単純シミュレーションしてみた結果、場合によっては赤字になってしまうことがわかりました。
ここまでの話で「元を取るのに時間がかかるのに蓄電池をつける意味ってあるの?」と思う方もいらっしゃると思いますが「単純シミュレーション」というところが、今回の記事のミソです。
単純な経済効果が薄い現在でも、蓄電池が普及してきている理由は、主に以下の3つです。
「もしも」の停電時・非常時に蓄電池を使うため
2022年時点で蓄電池を購入する最も大きな理由は、停電・非常時でも電気を使えるようにするためです。「平常時とあまり変わらない生活を送れる」というのは、家族を守るうえで「お金に替え難い大きな安心」になるでしょう。
日本では、ここ10年程度で
- 2011年の東日本大震災
- 2016年の熊本地震
- 2018年に相次いた巨大台風
など、自然災害による被害が目立つようになりました。
「ポータブル電源」と呼ばれる家庭のコンセントで充電できる、非常用やアウトドアなどで使える持ち運び可能な蓄電池も存在しますが、安価で手軽な反面、容量は大半が1kWh以下で実質はスマートフォンの充電やLED照明を1個つけるぐらいでしか使えません。
中途半端な形になってしまうことが多いので、定置型の5kWh前後~の蓄電池の方が人気ではあります。

2022年ポータブル電源おすすめ14選!キャンプ・災害の備えに
21,206view太陽光の売電期間が終了するため(卒FIT)
2022年時点で蓄電池を設置する理由として2番目に多いのが、太陽光発電の10年間売電期間が終了し、売電価格が一気に下落するため蓄電池を設置し、自己消費率を高くするという理由です。
売電単価が、おおよその方は約6分の1~5分の1程度になることから、安い金額でしか売電できないから、高い電気を買わないようにする、という考え方です。この考え方の詳細は3番目の理由で解説します
太陽光の売電終了(卒FIT)と蓄電池の関係については、以下のリンク先で詳しく解説しています。
電気代の継続的な上昇から「エネルギーの自給自足」
先ほど「単純なシミュレーション」と言ったポイントはここにあります。
金額で表したシミュレーションは「電気代の上昇を全く考慮していません」。
電気代は知らないうちに上昇している事実をご存知でしょうか。
経済産業省のデータからも東日本大震災の2011年~2012年比で、3割も電気代が既に実際に上昇しており、今後もこの上昇が続くと多くシンクタンクや、業界知見者の間では予想されています。
その主な理由は下記と言われています。
- 再生可能エネルギー賦課金:導入後8年で約13倍。2021年度現在は使用電力量×3.36円
(一般家庭では平均的に約1,500円前後~2,500円前後/月額の負担) - 運送・配送費用の高騰
- 世界的なインフレ・原材料の高騰
- 原油価格の高単価の維持と中東情勢の不安
- 燃料調整費のプラスになるとこへの不安
- 福島原発の廃炉費用
などが主な原因とされていますが、細かく原因を掴むより全体的にどれくらい上がっているか、またはどういった手法で「高くなる電気代をいかに買わないようにするか」が今後はキーポイントになってきます。
売電期間の満了により、創った電気を電力会社に売る「売電」という役目を終えた太陽光発電は、今後は創った電気を家庭内で消費する「自家消費型」へシフトしていくことが主流になり、電力会社から電気を購入する量を極力なくす「エネルギーの自給自足」生活で、賢く災害にも強い家にすることができます。
蓄電池70万円のマイナスは今後圧縮されていく可能性が高い
電力自由化になり、数年以上たちます。
電力では市場競争の原理での価格下落は起こりにくいと言われていましたが、実際に上昇傾向です。(送電網を大手電力会社が握っていることが要因)
蓄電池の経済メリットは経済優先モードでは、約110万円のマイナス、環境優先モードでも約70万円のマイナスと書きましたが、今後「蓄電池を設置していなかったら、買っていたであろう電気代が高くなっていく」ことを考慮すると、実際はこの金額から効果は圧縮されていく可能性が高いです。
また、一番導入理由として多いのが「災害停電対策」です。
仮に10年間で70万円の赤字としても、年間7万円での1日あたり約200円で、災害停電への保険と考えれば、そこまで高くないのではないでしょうか?
そして新築では、太陽光発電とのセットで約16年で元が取れる計算となり、災害対策も兼ねていることも考えると損ではないケースも増えてきます。