蓄電池の種類は?太陽光と連携可能な機種や工事不要のタイプも

家庭用蓄電池は、停電時に長時間電気を使いたい(系統連系型)や、太陽光発電と無駄なく連携したい(創蓄連携)、工事なしで室内に設置したい(コンセント接続型)、電気自動車を活用したい(V2H)といった用途に合わせて、最適な種類を選択可能です。

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蓄電池の種類は?太陽光と連携可能な機種や工事不要のタイプも

目次

家庭用蓄電池の種類は大きく分けて3つ

家庭用蓄電池(家庭の家電に電力を供給する蓄電池・蓄電システム)は、

大まかに分けて

が存在します。

大容量でスタンダードな「住宅用定置型」蓄電池

現在の主流となっているのは、系統連系を行える住宅用定置型です。

「住宅用定置型」というのは屋外または屋内に設置して使用するタイプの蓄電池です。

なお系統(電力会社等)と接続するとこにより、電力会社の電気を直接蓄電池に貯めたり、反対に売電中は蓄電池には充電しない(押し上げ無のシステムの場合)等の制御を行います。
(個々のタイプによって運転の方法は異なります)

定置型蓄電池は太陽光発電と連携が可能

住宅用定置型蓄電池では、平常時も突然曇って太陽光発電の出力が落ちた場合でも、自動的に電力会社の電気が充電された蓄電池に切り替わるなど、太陽光発電との連携が可能です。

次の項目で紹介する「コンセント接続型蓄電池」でも太陽光発電の電気を、貯めることは可能です。
ただし、停電時には太陽光発電を自立運転に切り替えて、そこから電気を取ることが手間となります。

卒FIT(売電10年目で終了の人)で自家消費型へ移行する人にもオススメ

住宅用定置型蓄電池は、特に卒FIT(売電10年目で終了の人)を中心に「自家消費型」へ移行される方は、自宅で使いきれない余剰電力を売電せずに貯めておき、太陽光発電が発電できない時間帯に使用することで「エネルギーの自給自足」の割合を増やして、できるだけ高い電気代を買わない工夫ができます。

住宅用定置型蓄電池は「ハイブリッド型」と「単機能型」の2種類能

住宅用定置型蓄電池は、大きく分けて「ハイブリッド型蓄電池」と「単機能型蓄電池」に分類されます。

太陽光発電と連携を有効的に自動で行ってくれるのが「ハイブリッド型蓄電池」です。

それに対して「単機能型蓄電池」は、太陽光発電システムからは基本的には独立しており、太陽光からの充電も可能ですが、ハイブリッドに比べると充電スピード等で違いが出る場合もあったりします。

太陽光発電とより無駄のない連携を望むなら「ハイブリッド型蓄電池」

住宅用定置型蓄電池では太陽光発電との連携が可能ですが、太陽光発電で創った電気を蓄電池に貯める際、それぞれのパワーコンディショナーを通す必要があるので、4~5%の変換ロスが発生します。

単機能型蓄電池の場合は、蓄電池へ充電するため蓄電池パワコンでAC(交流)→DC(直流)変換ロスが5%前後、更に追加で発生するため、合計で10%前後のロスを経て蓄電池へ充電されます。

ハイブリッド型蓄電池の多くのシステムは、パワーコンディショナーの連携がうまく組み合わさっている為、太陽光発電システムのDC(直流)出力から、蓄電池へ直接DC(直流)充電しロスを極力減らします。
ハイブリッド型蓄電池の変換ロスは4~7%程度と言われています。

大容量で太陽光発電システムから独立している「単機能型蓄電池」

住宅用定置型蓄電池の中でも、太陽光発電システムとうまく連携できるハイブリッド型に対して、基本的には太陽光発電システムから独立しているが単機能型蓄電池です。

大きな違いは、太陽光発電システムの余剰電力をうまくやりくりするのが、得意か否かです。

例えば単機能型蓄電池は停電時において「太陽光発電システムで発電した電気は基本的に自立運転の最大出力(1,500W)しか充電出来ない」などのデメリットがある反面、大容量かつ大出力の家全体の電力をバックアップ可能な「全負荷型」が多く停電時に住宅側に電気を供給する際には威力を発揮します。

ハイブリッド型と単機能型の違いやメリットデメリットは以下の記事で解説しています。

「特定負荷型」と「全負荷型」の2種類がある

住宅用定置型蓄電池には「特定負荷型」と「全負荷型」の2種類があり、それぞれ停電時の電気供給に違いがあります。
ハイブリッド型蓄電池の多くは「特定負荷型」。
単機能型蓄電池の多くは「全負荷型」が多くなります。

「特定負荷型」は特定回路にだけ電気を供給

「特定負荷型」蓄電池は、停電が起こるとあらかじめ選んでおいた特定の回路(分電盤の中の回路の2~4回路)にだけ電力を供給します。

たとえば、2回路まで選択できる商品であれば一階のリビングの照明やコンセント、台所の冷蔵庫(回路が2つに分かれている場合)などを選んでいた場合、その他の回路の電気は使用することができません。

「特定負荷型」蓄電池の場合は、停電時にあらかじめどの家電を使うか?を決めておく必要があります。

また、「停電時出力」が100V/1500W~2000Wの機種が多いため、200Vの家電(エコキュートやIHクッキングヒーター、一部の畳数が大きいエアコン)は動かすことができないものが多いです。

基本的な考え方は「停電時は最低限の家電だけでやりくりをして、電池を長持ちさせる」というのが特定負荷型蓄電池です。
そのため、家族はリビングに固まって、テレビでの情報やスマートフォンの充電ぐらいにしておき、最低限での電力で過ごすことになります。

ハイブリッド型であれば日中晴れていて、太陽光発電で発電ができていれば蓄電池に充電しながら、電気を使うことも可能です。

「全負荷型」は家全体に電気を供給

「全負荷型」蓄電池は、停電が起こると家全体の電力をバックアップするため、すべての家電を使用することができます。

そのため、「特定負荷型」蓄電池のように、どの家電を動かすべきか頭を悩ませる必要もありません。

「停電時出力」が200Vの蓄電池を選べば、「特定負荷型」では難しい200Vの家電(エコキュートやIHクッキングヒーター、一部の畳数が大きいエアコン)を動かすうごかせるのも「全負荷型」蓄電池の特徴です。

ただし、2,000~5,000Wの最大値が設定されているため、それ以上の電気を一時的に使うとシステムダウンします。(蓄電池からの電気の供給が止まるので、停電した状態になります。自動普及の有無はメーカーによります)。
また、家全体の電力が使えるといっても、蓄電池の「定格出力」(約2,000~5,000W)の最大値が設定されているため、それ以上の電気を一時的に使うとシステムダウンします。

「押し上げ効果なし」で売電単価を維持可能(2018年以前のFIT)

住宅用定置型蓄電池の中には、「押し上げ効果あり」の機種と、「押し上げ効果なし」の機種が存在します。

「押し上げ効果」というのは、太陽光発電が電気を創っている時間帯に、蓄電池の電気を利用して家庭内の消費電力をまかなうことで、「太陽光発電の売電量を増やす(押し上げる)効果」という意味です。

また、この「押し上げ効果」を利用して売電量を増やすと、「ダブル発電」という扱いになり、2018年以前に太陽光発電を設置されているご家庭ではFIT(固定価格買取制度)の売電単価が下がってしまいます。

そのため、2018年度以前に太陽光発電を設置した人は「押し上げ効果なし」の蓄電池を選ぶことで、売電価格が下がる「ダブル発電」になるのを回避することができます。

ただし、FITの権利が10年を超えて、売電価格が既に48円や42円から下がっている方はこの話の対象外の為、あまり考慮しなくても良いかもしれません。

「押し上げ効果あり」ならダブル発電扱い(2018年以前のFIT)

上記でもご説明したましたが、「ダブル発電」とは「押し上げ効果あり」の蓄電池に電気代が安い夜間の電気を貯めておき、日中に家庭内で使用する電力は貯めておいた蓄電池の電気でまかない、太陽光発電で売電できる電力量を増やすというものです。

「ダブル発電」の売電単価は、2019年度からシングル発電と同じ「24円」に設定されています。

そのため、2019年以降に太陽光発電を設置する場合は、「押し上げ効果あり」の蓄電池でダブル発電にしたほうがお得かと思いがちですが、生活スタイル(電気をどの時間帯に多く使うか)や、電気の契約の内容で関わってきますので、一概にダブル発電した方が得というわけでもありません。

理由としては、現在は「売る電気より買う電気の方が高い」からです。
太陽光発電が発電している間は、基本的には0円で電気が供給できるわけですが、この電気を自己消費することが一番の安上りになります。

深夜電力の13円~16円で貯めた電気を、本来0円で運用できる日中に使ってしまうより、太陽光発電が使えない夕方や夜に使う方が得策になっているため、ダブル発電との差がなくなったわけです。

工事が必要な住宅用定置型蓄電池

住宅用定置型蓄電池の特徴は、導入にあたって設置工事や電気系統工事が必要になることです。

まず設置工事ですが、屋外工事の場合は「基礎工事」を行う場合と、行わなくても大丈夫な商品がありますので、設置場所が限られている方や、基礎工事でも費用が変わってくるため、事前に調査を行った上で「蓄電池設置」を行います。また、各メーカーの蓄電池の大きさに応じたスペースを確保する必要があります。

屋内工事の場合は、多くは階段下収納や、納戸、ウォークインクローゼット、玄関収納などに設置される場合が多いです。蓄電池本体の左右と上部では、最低離隔距離が設定されているので、ぴったり何かとくっついていないこと、完全に密封されて隔離されていないところで邪魔にならないところ、になります。

電気系統工事は、蓄電池の配線などに関する工事で、「専用分電盤取り付け」(特定負荷の場合)、「配線工事」、「モニター取り付け」、「太陽光発電との接続連携」などがあります。

住宅用定置型蓄電池のメリット

大容量な機種が多く停電時も電気を長時間使用できる

住宅用定置型蓄電池は、「コンセント接続型蓄電池」に比べて大容量な機種が多く、停電が起きた場合でも長時間、電気を使用することができるので安心です。

なお、実際に停電が起きた場合に消費する1日あたりの電力は5,500W(5.5kW)程度ですので、5kWhの蓄電池なら約1日、10kWhの蓄電池なら約2日ほど電気をまかなうことが可能です。

いざ停電になったとき、蓄電池の電気だけでどのくらい保つのかについて、さらに詳しくはこちらの記事をご覧ください。

電気代を削減可能

住宅用定置型蓄電池は、災害時でなく普段使いとして主に2つの運転方法があります。

  • 電力会社から夜間の安い電力を購入して蓄電池に貯めておき、昼間に使用することで電気代を削減する運転
  • 太陽光発電システムで作った電気を、日中に蓄電池にためておき、夕方から夜間に使用することで、電気代を削減する運転

停電時でも、同時にたくさんの家電を動かせる

住宅用定置型蓄電池は、コンセント接続型にくらべて蓄電池のスペックのひとつである「定格出力」や「定格電圧」の値が大きいため、同時にたくさんの家電を動かすことができます。

最大2,000Wというタイプがどれくらいの家電製品の運転ができるか?ですが、下記を参考にしてみて下さい。

  • スマートフォンの充電:5W~10W
  • 液晶テレビ(32型)150W~350W
  • 冷蔵庫(500L前後)250W前後~400W前後
  • 照明(LED):10W~50W
  • こたつ:600W~800W
  • 炊飯器:700W~1000W
  • ドライヤー:1000~1200W

上記のような形で、合計で2,000Wを超えないように使えば大丈夫、となります。

また豆知識ですが、基本的に「電気から熱をつくりだす家電」は消費電力が非常に高いため、非常時は考慮して使用することをおすすめします。

太陽光発電で創った電気を蓄電池に貯められる

太陽光発電を設置している場合、太陽光発電で創った電気を住宅用定置型蓄電池に貯めることができます。

これによって、非常時でも太陽光発電が創った電気を家庭内で使用し、使いきれなかった余剰電力を蓄電池にためておいて夜間に使用することで、停電が長引いても電気を使用した生活を送ることができます。

補助金を利用することができる

住宅用定置型は、今では手が届きやすい価格に下落してきましたが、SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)や地方自治体から交付されている補助金を利用することで、お得に購入することができます。

ただし現在は、太陽光発電とセットで設置すること、等条件がある場合が多いので、SIIの補助金も勿論ですが地方自治体の補助金は条件をしっかり確認することが必要です。

停電時でも自動で通電してくれる

停電時に家全体の家電に電力を供給する「全負荷型」は、停電時に自動で家全体の電気をバックアップしてくれます。バックアップにかかる時間もほぼ一瞬ですので、停電後に「暗くてなにもできない」といった状態も防げます。(数秒間のブランクがあり、無停電機能を保持している蓄電池は限られています)
また、200Vの家電を動かすことができる機種が多いため、IHクッキングヒーターや一部の畳数が大きいエアコンも動かすことができます。

しかし注意が必要なのは、普段とあまり変わらず生活できてしまうため、使い過ぎには注意が必要です。200Vのエアコンは使い方にもよりますが、1時間で1kw近く消費したり、エコキュートは一晩で4~5kw消費するため、普段と変わらずエコキュートを深夜に稼働させていたら、朝起きたら空っぽになっていた、ということもあります。

なお、「特定負荷型」蓄電池の場合、あらかじめ設定しておいた回路にだけ、停電時に自動(設定により変更可能)で通電を行ってくれます。

住宅用定置型蓄電池のデメリット

初期費用(商品代+工事費)が高額

住宅用定置型蓄電池のデメリットは、初期費用がコンセント接続型よりも高額なことが挙げられます。その理由は、「容量が大きいこと」と「設置工事費用が必要なこと」が原因です。

現在、家庭用蓄電池は容量が大きくなってもあまり割安にならない傾向があります。5kWhと10kWhの蓄電池では単純に2倍の価格、となることが多いです。また、設置工事費用は「約20万~約50万円」が相場です。(太陽光発電と同時の場合~単独で後付け設置の場合などで大きく変動)

  • 容量5kWh前後:定価で税別100万円前後
  • 容量10kWh前後:定価で税別150~200万円前後
  • 設置工事費用:約20~50万円

導入のために工事が必要

住宅用定置型蓄電池は、コンセント接続型のように、購入したらすぐ使えるというわけではありません。使えるようになるためには設置工事が必要なので、コンセント接続型よりも手間と工事費用が余計にかかります。

一度設置したら移動できない

住宅用定置型蓄電池は、一度設置した場所から移動することや持ち運びすることは基本的にできません。どうしても移動の必要がある場合は、設置を頼んだ業者へ依頼しましょう。

代表的なハイブリッド型の住宅用定置型蓄電池

パナソニック「創蓄連携システム(LJB1156)」

  • 容量:11.2kWh(5.6kWh✕2台)
  • 定価:2,980,800円(税別)
  • 保証期間:10年間/充電可能容量60%以上を保証

シャープ「クラウド蓄電池システム(JH-WB1821)」

  • 容量:8.4kWh
  • 定価:549,800円(税別)
  • 保証期間:10年間/充電可能容量60%以上を保証

代表的な単機能型の住宅用定置型蓄電池

伊藤忠商事「スマートスターL」

  • 容量:9.8kWh
  • 定価:2,850,000円(税別)
  • 保証期間:10年間/充電可能容量60%以上を保証

ニチコン「ESS-H1L1」

  • 容量:12kWh
  • 定価:4,200,000円(税別)
  • 保証期間:15年間/充電可能容量50%以上を保証

ハイブリッド型と単機能型の違いやメリットデメリットは以下の記事で解説しています。

コンセント接続型蓄電池は、「スタンドアロン」型や「据え置き」型、「ポータブル」型とも呼ばれる蓄電池で、小型で自宅のコンセントに差して使用することができます。

工事不要で使用できるコンセント接続型

スタンドアロン型やポータブル型とも呼ばれる「コンセント接続型」蓄電池の最大の特徴は、設置工事が不要で家の中のコンセントに電源を差せばすぐに使用できるという点です。

定置型の蓄電池が屋外に置くタイプがありますが、コンセント接続型の蓄電池は屋内に置くことを想定しています。例えば、リビングのちょっとしたスペースなどに設置することも、小型のタイプが多いので可能です。

また、蓄電池の足にキャスター(車輪)がついていて、簡単に移動できる機種あります。家庭だけでなく、会社のノートパソコンやお店のレジなどの電源確保にも使用されている場合があります。

また「ポータブル電源」と呼ばれる非常用やアウトドアなどで使える持ち運び可能な蓄電池も存在します。

「ポータブル電源」については以下の記事で選び方、おすすめ商品を紹介しています。

コンセント接続型と太陽光発電は接続不可

コンセント接続型蓄電池は、太陽光発電で創った電気を貯めることは直接的にはできません。
そのため、太陽光発電を設置しているご家庭や、蓄電池と一緒に太陽光発電を設置しようと思っているご家庭は、コンセント接続型蓄電池よりも「住宅用定置型蓄電池」を導入したほうが良いでしょう。

※ただし、例外としてパナソニック「LJ-SF50B」など一部の機種では、停電時に条件を満たすことで太陽光発電からの充電が可能な場合もあります。

>>住宅用定置型蓄電池はコチラ

>>創蓄連携システムはコチラ

コンセント接続型のメリット

設置工事が不要ですぐ使える

コンセント接続型蓄電池のメリットは、工事が不要で購入してからコンセントに繋げばすぐに使用が可能になることです。

定置型よりリーズナブル

コンセント接続型は、小型で容量が小さい上に工事費も不要なので、住宅用定置型蓄電池よりも低価格で購入することができます。

室内の空スペースを活用できる

コンセント接続型は、小型で屋内設置可能な機種が多いので、部屋の中のちょっとしたスペースや、階段の裏のデッドスペース等にも設置が可能で邪魔になりません。

コンセント接続型のデメリット

容量が小さい(5kWh以下が主流)

コンセント接続型蓄電池のデメリットは、住宅用定置型の蓄電池に比べて容量が小さいことです。住宅用定置型蓄電池は10kWh以上の機種も多くありますが、コンセント接続型は5kWh以下が主流となっています。

容量が小さいため、停電時もあまりたくさんの電気を長時間使用することはできません。

停電時に同時に使用できる家電の数が少ない

コンセント接続型は、同時に家電を使用できる容量も住宅用定置型の蓄電池に比べて少なく、電源も100Vの機種がほとんどなので、200VのIHクッキングヒーターや畳数が広いエアコンといった200V電源の家電は動かすことができません。

また最大出力も1,000~1,500Wとなっており、一度に同時に使える家電が限られてきますのでその点も注意が必要です。

太陽光発電との連携ができない

コンセント接続型の蓄電池は、太陽光発電で創った電気を直接的には貯めることはできません。(太陽光発電が発電しており、余剰電力が発生している最中に、充電する場合はこの限りではない)

ただし、例外としてパナソニック「LJ-SF50B」など一部の機種では、停電時に条件を満たすことで太陽光発電からの充電が可能な場合もありますが、この場合も基本的には太陽光発電システムの自立運転から電気を供給する形になります。

停電時に自動で回路に電気を送ることができない

コンセント接続型の蓄電池は、住宅用定置型蓄電池の「全負荷型」や「特定負荷型」のように、停電時に家全体の電力をカバーすることや、特定の回路に自動で電気を送ったりすることができません。

代表的な「コンセント接続型」蓄電池

パナソニック「LJ-SF50B」

  • 容量:5kWh
  • 定価:1,280,000円(税別)
  • 保証期間:7年間/定格容量60%以上を保証

パナソニックの蓄電池については以下の記事で詳しく解説しています。

電気自動車を蓄電池として使う「V2Hシステム」

V2Hは、簡単に言ってしまうと電気自動車を蓄電池がわりとして使用するシステムになります。電気自動車と言っても2種類あり、

・家庭の電気(系統)へ電気自動車から電気を送れる車種(V2H対応)
・家庭の電気(系統)へ電気自動車から電気を送れない車種(V2H非対応)

の2種類があり、どちらも家庭内の電気から電気自動車へ充電することはできますが、電気自動車の電気を家庭内へ送ることは車種とシステムが揃っていないと、電気自動車から家庭内へ送ることはできません。

V2Hシステムを利用することで、電気自動車に貯まっている電気を家庭内で使用したり、太陽光発電で創った電気を電気自動車に充電するなど、電気自動車を蓄電池のように使用することが可能となります。

V2Hシステムで可能なこと

  • 自宅の電気を電気自動車へ充電できる
  • 電気自動車の電気を自宅で使用できる
  • 太陽光発電で創った電気を電気自動車に充電できる
  • 夜間の割安な電気で電気自動車の充電ができる

ちなみにV2Hは「Vehicle to Home」の略称で、「車(Vehicle)から家(Home)へ」という意味になります。

V2Hシステムの仕組み

V2Hを実現するためには、V2Hに対応した電気自動車が必要です。現在発売されている車種はそれほど多くありませんが、今後増えていくことが期待されています。

代表的なV2H対応の電気自動車

V2Hに対応した電気自動車は、現在のところ以下の車種が発売されています。

  • 日産リーフ
  • 日産e-NV200
  • 三菱アウトランダーPHEV
  • 三菱i-MiEV<
  • 三菱i-MiEV MINICAB
  • トヨタプリウスPHEV

まだ車種は少ないですが、今後も新しい電気自動車がどんどん発表されることが期待されています。

EV用パワーコンディショナーで直流から交流に変換

V2Hに欠かせないのが「EV用パワーコンディショナー」と呼ばれる機器です。
電気自動車に貯まっている電気は直流電流です。一方、家庭内の家電などで使用する電気は交流電流となり、そのままでは使えません。

「EV用パワーコンディショナー」は、電気自動車に貯まっている直流電流の電気を、家庭内で使用できる交流電流の電気に変換する働きをもっています。これにより、従来は不可能だった「電気自動車に貯めた電気を家庭内で使用する」といったことが可能となります。

なお、「EV用パワーコンディショナー」は、メーカーによって「EVパワーステーション」などと呼ばれることもあります。

V2Hシステムのメリット

V2Hシステムを導入するメリットは次のとおりです。

普通の蓄電池よりも大容量!

V2Hシステムで蓄電池の代わりとなる電気自動車は、普段は車として運用されるため、通常の蓄電池よりも容量が大きいという特徴があります。

以下、主要なV2H対応の電気自動車の電池容量ですが、

  • 日産「リーフ」:電池容量40~60kWh
  • 三菱自動車「i-MiEV」:電池容量16kWh
  • 三菱自動車「アウトランダーPHEV」:電池容量13.8kWh

このようになっています。

もっとも容量が少ない三菱自動車「アウトランダーPHEV」ですら、大容量蓄電池(12kWh程度)に匹敵する電池容量を持っています。

容量が大きければ、それだけ停電時に長時間の電気を使用することができるため、「もしも」の停電時に重宝するでしょう。

自動車と蓄電池2つの役割を担える

家庭用蓄電池は、当然ですが電気を貯める蓄電池の役割しか果たせません。しかし、V2Hシステムならば、電気自動車を「乗り物」と「蓄電池」2つの役割で活用することができます。

しかも、家庭用蓄電池も電気自動車と変わらないくらい高額ですので、乗り物としての活用もできるV2Hのほうがお得という考え方もできると思います。なお、V2Hシステムには電気自動車の他に「EV用パワーコンディショナー」を購入する必要もありますが、こちらは最近40万円程度の安いタイプのものも出始めています。

停電時も電気が使える

V2Hシステムを導入することで、定置型やコンセント接続型の蓄電池と同じように停電時でも電気を使用できるようになります。そのため、災害時など突然の停電でも電気が使えるので、普段と同じように生活することが可能です。

ただし、電気自動車だけですと貯められる電気に限りがあるので、太陽光発電と一緒に使用すると、長期間の停電でも安心です。

電気代の削減になる

オール電化プランを契約しているご家庭では、夜間の安い電力を電気自動車に貯めておき、電気代が高い昼間に使用して電気代を削減することができます。

また、太陽光発電を設置しているご家庭では、太陽光発電で創った電気を電気自動車に貯めておき、太陽光発電が発電できない朝方や夕方に電気自動車の電気を使用することで、電力会社からの買電量を減らすことが可能です。

「ピークシフト」にも貢献可能

夏場など電力使用が多くなる季節では、電気の「ピーク時間帯」というものが設けられています。ピーク時間帯は電力会社ごとに違いますが、東京電力では「夏季の平日(土曜日を含みます)の午後1時から午後4時まで」と定められており、その他の電力会社も大体同じ時間帯です。

このピーク時間帯に電力の使用が集中しすぎると、電力の供給が追いつかなる場合があります。それを防ぐためには、ピーク時間帯の電力消費を蓄電池や太陽光発電でまかなう「ピークシフト」をおこなう必要があります。

V2Hシステムも蓄電池などと同様にこの「ピークシフト」に貢献することが可能です。また「ピークシフトプラン」に加入しているご家庭では、電気代が極端に高くなる「ピーク時間帯」の買電を避けることで、電気代の節約につげることもできます。

V2Hシステムのデメリット

電気自動車の他にEVパワーステーションの購入が必要

V2Hシステムは、電気自動車の他にもEVパワーステーションを購入する必要がありますので、通常の蓄電池よりも出費は大きくなります。

電気自動車とEVパワーステーションの価格の目安は以下の通りです。

  • 電気自動車:新型日産リーフ315万円~
  • EVパワーステーション:40~100万円

※価格は税別です。
※パワーコンディショナー単体の価格です。他周辺接続部材・工事費が追加になります

ただし、電気自動車の普及や蓄電池の需要拡大によって、今後は価格競争が進み、もっとリーズナブルな車種や機種が発売される可能性もありますが、レアメタル等の価格上昇の懸念事項もあるため、太陽光パネルのような大幅な下落には繋がりにくい、と考えられています。

駐車場が必要になる

V2Hシステムは、電気自動車を導入するための駐車場が必要となります。そのため、駐車スペースがある一軒家でないと導入することができません。

また、駐車スペースの他にも、EVパワーステーションを設置するためのスペースも確保する必要があります。

運転している間は蓄電池として使用できない

電気自動車を運転している間は、当然ですが蓄電池としての役割は果たせません。

そのため、電気自動車を頻繁に運転する予定の人は、「昼間に電気自動車の電気を家庭内で使用して電気代を削減する」といった使い方は難しいかもしれません。

今後は格安の家庭用蓄電池が続々登場?!

2019年から始まる卒FIT(FIT10年目で売電が終了すること)により、蓄電池の需要が今後高まることが見込まれています。これに合わせて、各メーカーからこれまでより安価な家庭用蓄電池が続々登場することが期待されています。

実際に、定価99万円(税別)の「パワーウォール2」という蓄電池の発売がテスラ社から予定されています。また、ニチコンは2019年1月から定価39万8千円(税別)という低価格のV2Hシステムを発売しています。(V2Hシステムとは、太陽光発電と電気自動車を繋ぐシステムのこと)

このように、今後も続々と低価格でお求めになりやすい家庭用蓄電池が登場すると思いますので、期待して発表を待ちましょう。

リチウムイオン以外も!様々な蓄電池の種類

家庭用蓄電池などで使用されている「リチウムイオン電池」は有名ですが、実はそれ以外にも様々な蓄電池が存在しています。

ここでは「リチウムイオン電池」、「鉛蓄電池」、「ニカド電池」、「ニッケル水素電池」、「NAS電池」についてご紹介していきます。

家庭用蓄電池で使われている「リチウムイオン電池」

現在、ほとんどの家庭用蓄電池で使用されているのが、この「リチウムイオン電池」です。小型化や高密度化に優れており、電池内の充電状態や残りの容量が把握しやすく扱いやすいのが最大の特徴です。

そのため、家庭用蓄電池だけではなく、スマートフォンやノートパソコン、電気自動車のバッテリーなどでも利用されています。

非常用電源などに使われる「鉛蓄電池」

「鉛蓄電池」は、蓄電池の中でもっとも歴史が長く、開発されたのは1859年までさかのぼります。安価で多くの使用実績があり、現在もフォークリフトなどの電動車用主電源や非常用電源として用いられています。

電動工具用蓄電池などに使われる「ニカド電池」

「ニカド電池」は自然放電(蓄電池の容量が自然に減少する現象)が大きいため、長時間稼働させる機械には向いていません。そのかわり、短時間で高出力が必要となるモーター等には最適です。

また、放電で電圧がほぼゼロになっても、充電と放電を数回繰り返すだけで容量の回復が可能なため、現在でも電動工具やラジコンの蓄電池として利用されています。

乾電池などに使われる「ニッケル水素電池」

1990年に実用化された「ニッケル水素電池」は、欠点の多かった「ニカド電池」の代わりとして普及しました。高容量のため、携帯機器の電源としても使用されましたが、リチウムイオン電池の登場によって需要は減っていきました。

なお、現在でもハイブリッド車の蓄電部や、乾電池などで使用されています。

工場のバックアップ電源に使われる「NAS電池」

「NAS電池」は非常に効率よく充放電を行える蓄電池ですが、硫黄とナトリウムを使用しているため、運用する場合は専門家(危険物取扱者)のもとで行う必要があります。

そんな扱いが難しい「NAS電池」は、工場などの大規模施設にてバックアップ電源などとして利用されています。また、将来的には再生可能エネルギーの出力安定化のための利用が期待されています。